前のページ:コンセプトその1:フランス語の非合理的な文法を、なるべく合理的・体系的に説明する
コンセプトその2:文法用語をなるべくラテン語の文法用語に合わせる
フランス語はラテン語から発達した言語ですが、他にラテン語から発達した言語には、イタリア語・スペイン語・ポルトガル語・ルーマニア語などがあります。これらを、ロマンス言語といいます。
本来、ロマンス言語は文法的に互いによく似ているため、一つをマスターすると、他のロマンス言語をマスターするのに強力なアドヴァンテージになります。
ところが、日本の文法書においては、ラテン語とロマンス各言語の文法書が、お互いに勝手な文法用語を採用しているため、どうもロマンス言語の文法的な類似性が文法書からは見えづらくなっています。なぜこうなったのかはよくわかりません。学問分野同士のセクショナリズムでしょうか。(ちなみに、ロシア語などのスラヴ言語では、ラテン語でいう「属格」を「生格」と呼ぶなど、さらに異なる文法用語を使用しています。)
いずれにせよ、このような事態は学ぶ側からすればたいへん迷惑な話です。ヨーロッパのインテリはたいてい2つ以上の外国語をマスターしていますが、これは、互いに文法構造が似ていて、文法用語も基本的に同じであるために、文法の勉強に割く時間が短くて済むというのが大きな理由となっています。ところが、日本では言語ごとに文法用語が違っているため、文法用語を対照させるだけでも一苦労で、たいへん学びにくくなっています。このことが、日本人の外国語力の発達の足を引っ張っているという側面があることは否定できないでしょう。
そこで、他の言語にも応用が利くよう、文法用語は、つとめてラテン語の伝統を汲む「正統な」文法用語に合わせるよう心がけました。実は、ヨーロッパ言語で採用されている文法というのは、もともとラテン語の文法を各国語に応用したものなのです。これは、ロマンス言語のみならず、ゲルマン系・スラヴ系の言語についてもそうです。ですから、ラテン語の文法用語を「正統」としてそれに合わせようとすることは、十分に理由のあることなのです。
それから、日本のフランス語文法書で流布している文法用語の中には、フランス語の原語を無視した日本独自の用語が採用されていることがあります。例えば、「半過去」・「大過去」といった用語はそうです。
以上の理由で、このウェブサイトにおいては、日本のフランス語文法書で流布している文法用語とは異なる用語を使用したところがいくつかあります。例えば、「未完了時制」「過去完了時制」などは、それに該当します。但し、既存の文法書や授業などで勉強している方が混乱されないように、流布している用語(「半過去」「大過去」など)も併記しておきました。
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