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コンセプトその4:発音の表記にカタカナを採用する
カタカナ表記を採用することには異論もあり、私自身もかつてそれに反対していたことがありますが、今ではその考えを改め、少なくともフランス語においては、カタカナ表記を採用することには大きな意味があると考えています。そのことを説明するために、私の個人的な体験をお話したいと思います。これは、私がドイツの大学で中国語を学んでいたときの体験です。
中国語では、使用する文字は漢字なのですが、発音を表記するのにピンインというアルファベットを使用します。日本という漢字文化圏から来た私は、漢字語彙とその意味はどんどん覚えられるのに、その発音(ピンイン)がなかなか覚えられずに困っていました。それに較べて、ドイツ人の学生は発音(ピンイン)とその意味をどんどん覚えていったのです(もっとも、漢字を覚えるのはたいへんそうでしたが)。その結果、驚くべきことに、ドイツ人のほうが中国語会話の上達が早かったのです。
なぜそうなったかというのは、実はあとから気づいたのですが、おそらく、日本人にとっては、漢字が身近な文字であるため、その文字で書かれた情報は摂取しやすく、逆に、アルファベットは身近な文字でないため、その文字で書かれた情報はなかなか摂取しにくかった、ということなのであったと考えています。反対に、ドイツ人学生にとっては、アルファベットは身近な文字であり、その文字で書かれた情報は摂取しやすかった、ということです。
実際、ドイツには、漢字を使わずにピンインだけでインテンシヴに中国語を学ぶコースが存在し、実際にそこで学んだ人はかなり中国語会話が上達します。
そうだとすると、日本人が中国語の単語の発音を覚える際には、ピンインではなくカタカナを使用したほうが効率よく覚えることができる、ということになります。これは、実際に実験してみるとよく分かると思いますが、ピンインで覚えるよりもはるかに効率的に覚えることができます。
フランス語というのも、中国語と同じく、表記と発音の一致しない言語ですから、その発音については、上記と同じ理由によって、アルファベットを基調にした発音記号ではなく、カタカナを使用するのが効率が良いということになります。
そこで、このウェブサイトでは、フランス語単語の発音表記については、メインの表記としてカタカナを使用します。
ただ、このように大々的にカタカナをフィーチャーする場合には、巷間のいい加減なカタカナへの転写方法を、もっと原音に近い精密で一貫したものにする必要があります。例えば、「oi」の転写は「オワ」というのが流布していますが、より原語に近い「ウワ」で統一しました。
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