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フランス語の歴史
ここでは、フランス語の歴史からフランス語の特徴を明らかにしていきましょう。
もともと「ガリア」と呼ばれていたフランスの地には、ガリア人と呼ばれるケルト民族が住んでいました。ところが、ローマのカエサルがガリアの地を征服し(その報告書がカエサルの『ガリア戦記』です)、ローマの属州となります。その後、ローマ帝国は衰亡し、今度はゲルマン人がこの地を征服して、フランク王国を建てます。フランスという国名は、このフランク王国の流れを汲むことに因んでいます。
このような複雑な歴史を歩んできたため、フランス人というのはかなり混血の進んだ人種であり、ケルト系の要素・ラテン系の要素・ゲルマン系の要素のそれぞれを併有しています。
しかし、言語については、ローマ人による征服以後、ラテン語が定着し、その民衆言語である俗ラテン語が現在のフランス語の基になっています。したがって、フランス語の文法構造や語彙は、基本的には、ラテン語のそれを受け継いだものになっています。
したがって、同じく俗ラテン語から発達したイタリア語・スペイン語・ポルトガル語などとは文法や語彙が類似しており、フランス語を習得すればこれらの言語を習得するのもかなり楽になります。
もっとも、もちろんフランス語にはケルト的な要素やゲルマン的な要素も残っているため、細かい点ではいろいろと違いがあることも確かです。この違いの度合いを反映して、もともと、フランス語の方言には、大きく分けて、北方で話されるオイル語と呼ばれるものと、南方で話されるオック語と呼ばれるものの2種類がありました。
しかし、中世より経済的な優位性を示した北部が次第に南部を圧倒するようになり、絶対王政の下でオイル語が公用語とされ、オック語は禁圧されていき、オイル語はフランスの国民言語としての地位を確立しました。現在のフランス語というのは、このオイル語を受け継いだものです。
なお、産業革命に至るまで、フランスはイングランドに対して文化的に優位に立っていたため、フランス語の語彙や文法は英語にも盛んに輸入されました。このため、フランス語の語彙や文法を学んでいると、英語のそれに似ていると感じることも多いでしょう。
また、フランスの国威が盛んだった頃は、欧州内と南米にはほとんど勢力拡大の余地が残されていなかったため(神聖ローマ帝国とスペインがほとんどを支配していた)、北米やアフリカに盛んに進出しました。このため、カナダのケベック州やアフリカの多くの国ではフランス語が公用語となっています。現在、世界中でフランス語を話す人の数は2億9000万人といわれます。日本語を話す人口の2倍余りですね。
フランス語は、英語が優勢になるまでは、国際社会の共通語として外交の場面でよく使用されていました。このため、現在でも、国際連合や欧州連合などの国際組織において、主要な公用語の一つとして使用されています。
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