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名詞の性
ヨーロッパ言語には、概ね名詞の性の区別があります(ヨーロッパ言語のうち、性の区別がないのは英語くらいのものです)。フランス語の基になったラテン語では、性が男性・女性・中性の3つに分かれていました。しかし、フランス語では中性が消失したので、フランス語の名詞は、男性名詞か女性名詞のいずれかとなります。
ところで、ここで問題としているのは「文法上の性」(genre grammatical)であり、「生物学上の性」(genre biologique)とは一応区別されるものです。しかしながら、両者の間に一定の関連性がある場合があります。これを整理すると次のようになります。
- 生物学上の性の区別があり、文法上も性の区別があるもの(主に人間と動物)。この場合は、生物学上の性と文法上の性が一致する。
- 生物学上の性の区別があるのに、文法上の性の区別がないもの(一定の職業、いくつかの動物)。この場合、生物学上の性と文法上の性が一致しないことがあります。
- 生物学上の性の区別がないのに、文法上の性が割り当てられているもの(ほとんどのモノ)。なお、魚介類・鳥・昆虫・軟体動物は、見た目で性が分かりにくいこともあり、基本的にモノ扱いです。すなわち、文法上の性の区別は原則としてありません。
このうち、一番目のものは生物学上の性と文法上の性が一致するので注意する必要はありませんし、三番目のものも生物学上の性の区別がないので、単なる暗記の問題となります。一番混乱の元になるのは、二番目の「生物学上の性があるのに、文法上の性の区別がないもの」であるということになります。なぜなら、生物学上の性と文法上の性が一致しないことがあるからです。
これには次の二つがあります:
- 生物学上の性にかかわらず、文法上はつねに男性であるもの。この場合、生物学上は女性でも文法上は男性となるものが出てくることになります。
- 生物学上の性にかかわらず、文法上はつねに女性であるもの。この場合、生物学上は男性でも文法上は女性となるものが出てくることになります。
生物学上の性にかかわらず、文法上はつねに男性である名詞(人と動物)には、次のものがあります。これらの名詞については、生物学上の女性についても、男性冠詞をつけた男性名詞で表現します。
- agent (m.)
- 〔アジャン〕警察官、エージェント。
- amateur (m.)
- 〔アマトゥル〕アマチュア、愛好家。
- assassin (m.)
- 〔アササン〕殺し屋、刺客。
- auteur (m.)
- 〔オトゥル〕著者。
- bandit (m.)
- 〔バンディ〕追剥、強盗、山賊。
- chef (m.)
- 〔シェフ〕ボス。但し、口語では「la chef」も使用される。
- docteur (m.)
- 〔ドクトゥル〕博士、医師。女性形「doctoresse」もあるが余り使われない。
- écrivain (m.)
- 〔エクリヴァン〕作家。
- éléphant (m.)
- 〔エレファン〕象(ゾウ)。
- gourmet (m.)
- 〔グルメ〕食通(グルメ)。
- ingénieur (m.)
- 〔アンジェニウル〕エンジニア。
- juge (m.)
- 〔ジュジュ〕裁判官。
- kangourou (m.)
- 〔カングル〕カンガルー。
- maire (m.)
- 〔メル〕市町村長。
- magisrat (m.)
- 〔マジストラ〕官吏。
- médicin (m.)
- 〔メドゥサン〕医師。
- ministre (m.)
- 〔ミニストル〕大臣。
- peintre (m.)
- 〔パントル〕画家。
- plombier (m.)
- 〔プロンビエ〕配管工。
- pompier (m.)
- 〔ポンピエ〕消防士。
- professeur (m.)
- 〔プロフェスル〕高校教師、大学教授。
- rat (m.)
- 〔ラ〕鼠(ラットのほう)。
- renard (m.)
- 〔ルナル〕狐(キツネ)。
- serpent (m.)
- 〔セルパン〕蛇(ヘビ)。
- successeur (m.)
- 〔シュクセスル〕相続人。
- tailleur (m.)
- 〔タユル〕洋服の仕立て屋。
- témoin (m.)
- 〔テモワン〕証人。
生物学上の性にかかわらず、文法上はつねに女性である名詞(動物)には、次のものがあります。これらの名詞については、生物学上の男性についても、女性冠詞をつけた女性名詞で表現します。
- girafe (f.)
- 〔ジラフ〕麒麟(キリン)。
- souris (f.)
- 〔スリ〕鼠(マウスのほう)。
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